ヒーロー&モリーアン

822-829

旧東京へと降りた俺を最初に出迎えたのは、天空に輝く黄金球だった。
センターが臭い物に蓋をするように埋め立てたこの場所だが、
完全に覆うには資金も時間も無かったらしく、ここからでも太陽を拝む事が出来た。
と言っても当然ミレニアムで見るよりは遠いはずだったが、
こちらで見る方が眩しく見えるのは気持ちの問題なのだろうか。
俺は柄にもなくそんな事を考えると、
随分と長い間太陽を見ていなかった気がして、軽く手を広げて全身で日の光を浴びる事にした。
たったそれだけの事で、ディアラマに匹敵するくらいにも活力が漲る。
とりあえず手近な街に向かおうとした俺の頭上に突然影が差したかと思うと、肩に軽い力が加わった。
顏を上に向けようとすると、目の前に銀色の輝きが煌いて視力を奪われてしまう。
眩しさに反射的に目を閉じ、開いた時には胸元に剣が突きつけられていた。
虚を突かれたとは言え、こうも完全に先手を取られたのは初めてだった。
いささかの興味深さも手伝って、俺は一旦相手に好きなようにさせる事にした。
ゆっくりと両手を上げて降伏の合図を送る。
「いい子だね。物分りのいい子は好きだよ」
良く通る美しい声でそう一声を告げた相手は、蒼白の肌に黒い甲冑を纏った女だった。
いや、正確に言うなら女性型か。
俺とさほど変わらぬ位置にある肩の向こうには、
陽の光に溶け込んでしまいそうに鮮やかな黄金色の髪と、
広げれば腕よりも長いだろう翼が見えていた。
「あたしはモリーアン。そのコンピュータってのでは妖鳥っていうのかい?
メシアってのが居るっていうからどんなのか見に来たら、案外大した事ないんだね」
そう名乗った彼女は、俺に剣を突きつけたまま片手で器用に兜を脱いだ。
押し込められていた前髪をわずらわしげにかきあげると、
髪の色よりもわずかに薄い色をした勝気な瞳で俺を正面から見据える。
整った眉目は充分に美しかったが、彼女を印象付けているのはその活力に溢れた目だった。
俺は胸元に剣があるのも忘れて彼女の顔に見入ってしまう。
彼女は見られる事に慣れているのか、俺の値踏みするような視線にも動じる事無く言葉を続ける。

「ま、残念だけどメシアとやらはしばらくお休みだね」
「しばらく…って事は殺す訳じゃないのか?」
「あんたがその気ならそうしてもいいけどね。
大丈夫、あたしが飽きる前に怒らせたりしなければそのうち解放してあげるさ。
どっちにしてもあんたの命はあたしが握ったって事」
なるほど、良くある話だ。
どこの神話にも人間を誘惑して、愛し、あるいは殺す悪魔や妖精達は必ず登場する。
モリーアンの名前は知らなかったが、彼女もその一人だったと言う訳だ。
見た所剣の腕は中々の物だし、背中の翼は人間には出来ない動きで敵を切り刻めるに違いない。
しかし、その均整の取れた身体は色事に使われる事をこそ望んでいるようだった。
俺は頭の中で素早く計算を始める。
戦士として優秀な彼女を仲魔に引き入れ、更にその肢体をも味わう方法を。
恐らく後者は簡単だろう。彼女もそう望んでいるのだから。
しかし、仲魔にする為には、少なくとも俺の方が強い、
と言う事を示さなければならなかった。
それがどんな形にせよ、だ。
このままだとやはり色事が一番手っ取り早そうだったが、
心理的に機先を制されてしまっているし、普通にしただけでは彼女を満足させる事は難しいだろう。
そんな事を考えながらモリーアンを見ていると、
俺が思ったよりも怖がらない事に苛立ったのか、彼女はやや声を大きくして話題を変えてきた。
「クー・フーリン。知っているかい? あんたらには英雄って呼ばれている男さ。
あいつもあたしの手で一度死んでいるんだよ」
モリーアンは俺を脅すつもりなのか、
血の色をした唇をサディスティックな形に歪めて笑ってみせる。
その程度の脅迫は本当の意味での死線を越えている
俺には今更片腹痛かったが、彼女を油断させる為に無表情で沈黙を保つ事にした。
それを怯えと受け取ったのか、モリーアンは手にした剣の切っ先を俺の顎に乗せて上向かせる。

「ふふっ、そうそう。大人しくしていれば可愛がってあげるよ。
顏もあいつには及ばないけれど、まぁその分こっちで楽しませてもらうよ」
手に入れた玩具にどう奉仕させようか考え始めているのか、
剣を収めると早くも瞳に淫蕩な輝きを浮かべながら一歩踏みこんで俺の下腹を撫で上げる。
間合いは充分だった。
俺は電光石火の速さでモリーアンの身体に右腕を回すと、背中の翼の付け根を掴んだ。
もう片方の腕は彼女の右腕ごと抱きかかえながら尾羽根の付け根を抑えこむ。
鳥族は人型をしていても、緊急の時はどうしても最初の動作は羽根からになる。
だから背中は最も弱い場所であり、翼の付け根を抑えると動きを封じる事が出来る。
彼女がその危険を知らない訳が無いが、
人間の俺がそんな事を知っているとは思いもしなかったのだろう。
「なっ、何をする気…!」
完全に油断していたのだろう、彼女の声は滑稽なほどうろたえていた。
「油断したな。気の強い女は嫌いじゃないが、お前は少し躾が必要だな」
抑制を効かせた低い声でそう告げて右腕の力をわずかに強める。
「痛っ…!」
腕から剣が滑り落ちる。
それを素早く足で踏みつけると、身体を突き飛ばした。
普通の女なら間違いなく尻持をついている所だが、
翼を羽ばたかせて巧みにバランスを取る。
「どうする? このまま逃げたって別に追わないぜ。
ただし、そうしたら剣は返せないがな」
俺はこの世界で悪魔と闘う者としての基本的な知識として、
それなりの過去の文献は読んでいたのだが、
その中に、ヨーロッパの方では剣は命よりも重いという記述があった。

それは騎士に関する記述であったのだが、
きっとクー・フーリンと出身を同じくする彼女にも通用するだろう、
と言う俺の賭けは当たっていた。
剣を奪われてしまった彼女は、最初の勢いも目に見えて衰え、
やや呆然とした面持ちで豹変した俺を見ている。
「…どうすれば返してくれるのさ」
「そうだな。しばらく俺と付き合って貰おうか。
俺が飽きたらそのうち返してやるさ」
意地悪く、先ほど言われた言葉にのしをつけて返してやる。
彼女は悔しそうに俺を睨みつけていたが、
俺が全く隙を見せない事を悟ると地獄の底からうなるような声で敗北を認めた。
「…わかったよ。好きにしな」
「物分りのいい女は嫌いじゃないな。…脱げよ」
屈辱感を植え付ける為に、わざと最小限の言葉だけで命令する。
効果はあったらしく、彼女は唇を噛み締めながら鎧の留め金に手をかけた。
恐らく特殊な材質で出来ているのだろう、
硬そうな外見に反して地面に立てさせた音は軽やかな物だった。
全てを脱ぎ捨てた彼女は、矜持がそうさせるのか、
女性にとって恥ずべき場所を手で隠すでも無く俺の前に立ち尽くす。
おかげで俺は彼女の身体を隅々まで姦する事ができた。
彼女の肌の色は日光の下ではやや不調和だったが、
それでもその身体全体から滲み出ている美しさは凡百の女性とは訳が違っていた。
クー・フーリンが彼女の誘いを断ったと言うのは、
もしかしたら彼は同性愛者ではなかったのか。
そう考えてしまうほど、男を誘い、虜にする、しなやかで熟れた身体だった。
ただ、その気性からして、やはり凡百の男ではあっさりと殺されてしまうだろうが。

「こっちに来いよ」
俺の言葉にも昂然と胸を張り、視線を逸らさずに歩み寄ってくる。
手の届く距離まで近づいてきた彼女の、
俺はまるでそうされる為にあるかのようにくびれている腰に腕を回すと、不意に唇を奪った。
抵抗するように腕の中で暴れたが、翼の付け根を優しく撫でてやると
一度身体を大きく震わせておとなしくなった。
餌を与える親鳥のように舌を差し込んで、ゆっくりと彼女の舌に絡めていく。
多分、今まで手に入れた男達には、する事はあってもさせる事は無かったのだろう。
彼女の舌はまるで少女のようにぎこちなく、
おかげで俺は存分に彼女の舌に快感を植え付け、その感触を楽しむ事が出来た。
俺が口を離しても、モリーアンはしばらく気付いていないようだった。
焦点の合わない瞳で俺を見ていたが、
我にかえると恥ずかしそうに目元を朱に染める。
「あ……随分と上手い…じゃないか…」
「気に入ってくれたか?」
俺の問いに彼女は答えなかったが、態度を見れば一目瞭然だった。
「次は…奉仕してもらおうか」
彼女はもう睨みつける事もなく俺の服をはだけさせると、
所々に唇を押し当てながら俺の下腹部を目指していく。
その仕種に思わず俺はまるで鳥がついばむようだ、
と笑い出しそうになるのを慌てて堪える。
膝立ちの格好で俺のペニスを正面から見据えたモリーアンは
ほとんどためらい無くひと息に咥えると、すぐに激しい口技を使いはじめた。
舌に唾液を乗せてまぶすように絡め、軽く吸い上げる。
顔にかかる髪を時々かきあげながら、音を立てて顏を前後させると、
それがもたらす快感に彼女の温かな口の中で俺の怒張が一層膨れ上がる。

それでも彼女はわずかに苦しそうな呻きを漏らしただけで放そうとはせず、
それどころか奥深くまで飲みこんだかと思うと、先端をねっとりと舐め回し、
裏側を執拗に責め立て、喉の粘膜に触れさせて刺激を与えてくる。
ただ棒を舐めるだけだと言うのに、彼女は驚くほど様々な技を駆使していた。
俺も色事に自信が無い訳では無かったが、
こちらの方では彼女の方がレベルが高いようだった。
形勢不利と見た俺は、やや惜しかったが彼女を立ちあがらせると、
足の間に手を割り込ませる。
咥えている内に感じていたのか、そこははっきりと判るほど潤っていた。
これなら前戯をしてやる必要もないだろう。
「どうしたのさ。まさかもうイきそうになったとか?」
余裕を取り戻したのか、モリーアンは挑発的に身体を押し付け、
俺のを足に挟んで軽く前後に振ってみせる。
「まだまだ…これからさ」
俺は虚勢を張ると彼女がそれ以上何か言う前にモリーアンの片足を抱え上げて挿入した。
「うっ……ぁ……」
いきなり奥深くまで貫かれて、彼女の細く尖った顎が仰け反る。
その声には普通の愉悦に加えて、蹂躙される悦びめいた物が混じっているようにも聞こえた。
興奮した俺はすぐに抽送を始めようと思ったが、この姿勢ではほとんど動く事が出来ない。
そこで俺は、唯一彼女の身体を支えている足も抱え上げた。
彼女も心得たもので、羽ばたきの音がして、俺の腕にかかる力が軽くなる。
おかげで俺は普段と同じ調子で腰を動かす事が出来るようになった。
「人間に、しては、中々、やる…じゃないか…」
彼女は所々で声を途切らせながらも、まだ余裕の表情で足を俺の腰に巻きつけて
蜜壷を締め上げてくる。

目の前で小刻みに揺れる乳房に欲望をそそられた俺は、
腰の動きをやや抑え気味にすると硬い尖りに唇を寄せた。
唇の柔らかい所で幾度か吸い、舌腹で全体を円を描くように味わう。
歯で乳首を挟んで軽く噛みながら窪みを舌先で刺激してやると、モリーアンの手が俺の頭を掴む。
「あ、ん…それ……いい……」
その声に気を良くした俺は、
左手一本で彼女を支えながら右手でもう片方の乳房にも愛撫を加える事にした。
丁度良い大きさの膨らみが、俺の手に吸いつく。
揉みしだくと柔らかく沈みこむが、
しかし一瞬後には弾き返すような勢いで元の形に戻る乳房を、俺は何度もこねまわす。
俺と彼女の体温が程よく交じり合い、肌と肌の隙間にしっとりと汗を生じさせる。
それは更なる快感を呼び、俺の身体を挟む足の力が強くなった。
腰が少し痛みを感じるほどの締め付けに、
俺は彼女よりも先に精を搾り取られる気がして再び腰を動かす事にした。
彼女の身体を地面と平行になるくらい倒して、肉壁の上側に擦りつける。
「あっ、あ……いい……いい…」
そのまま数回、ゆっくりとした動きで味わせてやると
そこが余程気持ち良いのか、彼女は自ら身体を更に倒して
俺の張っている部分をより強く肉壁に押しつけてきた。
「すごい……うぁっ、……ん、ん、そこ、もっと……」
足の力が緩んだのを感じた俺は、左足の太腿を抱え上げて、肩に乗せる。
目の前のしなやかに張っている膝の裏に軽く舌を這わせると、
繋がったまま一気に彼女の身体を回転させた。
人間ではおよそ不可能な動きだが、彼女は翼を動かしてバランスを巧みに取ってくれた。

「あっ、あっ…! こんな…こんなの…」
彼女もこんな動きは初めてなのだろう、さっきまでの余裕も完全に失い、
俺の突き上げるリズムに合わせて喘ぐのが精一杯になっていた。
俺も自分の中で爆発的な高まりが近いのを感じて、最後の攻めに出る事にした。
彼女の胸を鷲掴みにすると、小刻みに、何度も身体を貫く。
「もう、だめ、だめ………うぁぁっ!!」
一際激しい叫び声と共に肉襞が激しく締まり、俺の肉棒を吸い上げる。
俺も彼女の絶頂に合わせるようにとどめの一撃を奥深くまで打ちこんだ後、
そのまま彼女の中に欲望を解き放った。
大きく背中を反らせたモリーアンは、反動で深く身体を折るように崩れ落ちる。
手の中に戻ってきた彼女の重みを感じながら、
俺はその身体を抱きかかえてしばらく休憩しようとその場にあぐらをかいた。

「あんた…顔に似合わずすごい事するねぇ」
モリーアンは俺の首に腕を回しながら、色を帯びた声で囁く。
「だけど、悪くなかっただろう?」
「ああ…良かったよ。イカされちまったもんねぇ」
その時の快感を思い出したのか、彼女は軽く身を震わせると楽しそうに笑った。
俺は手元に落ちていた彼女の剣を拾うと、鞘に収めて返してやる。
「どうする? 一緒に来てくれるか?」
「当たり前だろう? 今度こそあたしがイカせてやらないとねぇ」
俺も笑って彼女の身体を軽く抱き締めると、街を探す為に立ちあがった。
街に着いたら最初にする事は俺と彼女が今日泊まる場所の確保だな、と思いながら。

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