ヒーロー&イシュタル・キクリヒメ

852-869

魔界の、奇妙に薄れた色彩の中を俺達は歩いていた。
暗いと言うのではなく、いや、確かに暗い事は暗いのだが、
それよりもどこまでが地面でどこからが空なのか、
境界線すら判別しない空間…それが魔界だった。
目を凝らして見ても何も見えないが、手で触れてみると確かに草は生えているし、
夜(かどうかも怪しいのだが)になれば月は出るものの、
それが人間界と同じ月と言う保証はどこにもない。
俺は特に青い空や白い雲が好きな訳では無かったが、
こうも無味乾燥な景色が続くと流石に人界が恋しくなる。
そんな愚にもつかない事を考えながら歩いていると、視界の端を健康的な肌色がかすめた。
それは、今俺が仲魔として召喚しているイシュタルの物だった。
ビナーの海でアスタロトと言う仲魔が彼女になった時は驚いたが、
その後改めて召喚した彼女は俺の中の女神と言うイメージを完全に壊してくれた。
成熟した母性をたたえる顏立ちとは裏腹に人懐っこく、そして性に奔放な古代バビロニアの主神。
その身体は世の全ての男達の欲望を疼かせ、あらゆる女達が理想とする肉感を備えていた。
普段はなるべく見ないようにしているのだが、今のようにうっかり目にしてしまうともう抑えが効かなかった。
さりげなく左手を伸ばして豊満な尻を撫でる。
彼女の豊かな尻を包む衣服は呆れるほどその面積が小さく、
その気になれば直接素肌に触れる事だって簡単なのだが、
昼間はそこまではしないのが俺達のルールだった。
「きゃっ! …もう、止めなさい!」
イシュタルはその叫び声ほど驚いたようには見えなかったが、
許しも無く勝手に触れた不埒な俺の手を思いきり叩いた。

「だってしょうがないだろう? そんな薄着で目の前を歩かれたら」
「貴方は仮にも救世主なんでしょ? 少しは自覚ってものを持ったらどうなの」
一日一回は行われているこの手の会話。
もう毎度の事で馬鹿馬鹿しくなっているのか、
他の仲魔達もにやにや笑うばかりで参加して来ない。
俺が少し距離を置いて謝るポーズをとると、
イシュタルは蹴ろうか迷ったが止めてやる、といった表情をしてそっぽを向いた。
俺は仲魔達に頭を掻いて照れ笑いを浮かべると、再び彼女の隣に並ぶ。
背後から仲魔達の下卑た笑い声がしたが、
これもまあガス抜きのような物だと思っていちいち気にしない事にしている。

俺とイシュタルは本当の恋仲と言う訳ではなかったが、
慈愛豊かな聖娼であり、そしてそれ故に二千年の長きに渡って悪魔として貶められていた彼女は、
本来の姿を取り戻した後はそれまでのうっぷんを晴らすかのように貪欲に性を求め、
そして俺もその手の事が嫌いではなかったから夜は大概睦んでいた。
今日も例外ではなく、食事を終えた俺達はすぐに身体を交えはじめる。
昼間は他の悪魔達の手前俺を拒絶する
(奴等が俺達の関係に気付いていないとはとても思えないが)
イシュタルも、二人だけになればその本性を表わし、淫らな聖娼となる。
その昼と夜のギャップの激しさは、
マグネタイトの消費も構わず常に彼女に傍にいてもらうに充分値するものだった。
鎧を脱いだ俺が地面に腰を下ろすと、その横にかしずくようにイシュタルが座る。
俺は彼女と主従の関係であると思った事は一度も無いが、
ごく自然に男を立ててくれる彼女の振舞はそれだけで欲望をそそられてしまう。
イシュタルの腰に手を回すと彼女は積極的に近づいて俺の腕にしなだれかかってきた。
「今日は暑かったわね。汗かいちゃった」

神様でも汗はかくのか。
俺は以前疑問を抱いて、イシュタルに直接尋ねてみた事があった。
その答えは、
「神界ならそういう事は無いが、
人間の目に見えるようにする為にはよりこちらの側に近い形をとらなければならない為、
同じように汗はかく」
と言うものだった。
説明になっているのだかそうでないのだか解らない答えだったが、
「あ、なんか変な事考えたでしょ」
そう言われて鼻頭を弾かれてはそれ以上聞く事は出来なかった。

その時の事を思い出して笑う俺に、イシュタルが不思議そうな顔をする。
「どうしたの?」
「なんでもない」
俺はそれ以上突っ込まれるのを避ける為に彼女の二の腕に口付けた。
確かにほんのわずかだが汗の残り香が鼻腔をくすぐる。
「もう…匂いなんて嗅がないでよ」
俺の仕種にイシュタルは顔をしかめるが、すぐに自分もまねをして鼻を軽く突き出す。
「あなたも…汗の匂い、するわね」
「嫌な匂いじゃないだろう?」
「嫌よ…くさいもの」
そう言いながらも顔は離すどころか逆に押しつけて来て、遂にはそのまま俺を押し倒す。
魔界の大地に寝そべった俺達は、幾度と無くその位置を変えながらじゃれ合う。
全裸のまま転がり回る事に始めこそ照れがあったが、
今ではすっかり彼女のペースに乗せられて俺もこの前戯を楽しんでいた。

「ねぇ…キスしてよ」
上になったイシュタルの求めに応じて、彼女の頭を引き寄せる。
とは言っても二人とも牽制するように軽く唇を合わせるだけで、本格的なものではない。
どちらが先に折れて相手に負けを認めるか、
または不意を衝いて相手に負けを認めさせる事ができるか。
このゲームはカジノやロシアンルーレットなどとは比べ物にならない甘いスリルに満ちていた。
少しずつ唇を合わせている時間が長くなってきたが、
まだイシュタルは仕掛けてこようとしなかった。
舌をねじ込みたくなって来たのを堪えながら少し強く唇を吸うと、
イシュタルが鼻にかかった声を漏らす。
計算してか否か判らなかったが、俺の忍耐はそれで弾けてしまった。
もう何度目かも判らないキスを始める。
ゲームの始まりもキスだったが、終えるのもまたキスが合図だった。
我慢出来なくなった俺はそれまでの軽いキスから一転して、イシュタルの口の中に舌を踊りこませる。
しかし向こうも同じ事を考えていたのか、俺の舌が口に入る寸前に彼女の舌に絡めとられてしまい、
そのまま口の外でお互いの舌を貪る。
今日は引き分けと言った所だろうか、
舌を離した俺達はどちらからともなく笑うと、半転して俺が上になった。
足を軽く開いたイシュタルが俺の身体を挟みこむと、
雌の身体を求めるペニスが彼女に当たる。
「やだ…キスでこんなになっちゃったの?」
それは決して俺を馬鹿にした言い方では無かったが、
子供っぽい反抗心を刺激された俺は彼女の下腹部に触れる。
そこは予想通り既に蜜にまみれていて、俺はわずかに余裕を取り戻す事が出来た。
「お前だって、今日はいつもより濡れてないか?」
「もう…そういう事言わないの」

俺の言葉にイシュタルは恥ずかしそうに答える。
抱く度に新たな技を披露しても、恥じらいは残したままというのがまた俺を惹きつける。
今も彼女の答えに反応したのは下半身の方が先だった。
まだ何もされていないのに、もうこれ以上は無理なほど血が一点に集まる。
待ちきれずに先端から溢れる液を彼女の密生した茂みに擦りつけると、
彼女の手が優しく俺を導いた。
「まだ夜は長いのに…途中で寝たら嫌よ」
「寝たらマハジオで起こされたって文句は言わないよ」
俺は真っ暗な地面に手を付いて身体を起こし、彼女に楔を打ちこむ準備を整える。
たまには柔らかなベッドの上で抱きたいと思っても、
イシュタルは生命が感じられないと嫌だ、と土や草の上でないとする事を拒む。
俺は逆に緑色でない草や茶色でない土はどうも慣れないのだが、
こういう時男が弱いのは全世界共通だ。
身体を離すと彼女の体にまとわりつく小さな薄衣が目に付き、
本当にその役目を果たしているのか疑問を抱きつつも一気に剥ぎ取る。
そのまま最初の挿入をしようとしたが、その寸前に彼女の掌が胸に押し当てられる。
一番興奮する瞬間を妨げられて俺は不満気にイシュタルを見たが、彼女は冷静に耳うちした。
「ねぇ…誰かが見てるわよ」
さすがは大女神、性を愉しんでも性に溺れる事はなかった。
俺も彼女の胸に顔をうずめながら気配を探ると、
確かにそれ程遠くない何処かから俺達を覗く視線を感じる。
出歯亀ならば別に構わないが、襲ってこられると流石に困る。
キスをするふりをして素早く作戦を立てた俺達はすぐに行動に出た。
俺の首に巻きついていたイシュタルの掌から衝撃が疾る。
巧みに狙いを外したそれは、不心得者の足元で土埃を上げた。

「きゃっ…!」
瓦礫の向こうから小さな声がして、何かが倒れる音がその後に続く。
その声が若い女性の物だった事に、俺とイシュタルは顔を見合わせると声の元に走った。
月明かりを頼りに人影を探すと、薄暗がりの地面に見覚えのある赤い衣が尻餅をついていた。
「菊理姫!」
そこにいた人物の意外さに俺達は思わず揃って声を上げる。
「あ、あの…」
名前を呼ばれた菊理姫は怯えたように声を上げ、突然手で顏を覆ってしまう。
一瞬後に俺は彼女の行動の意味を知った。
それはそうだろう、今まさに挿入する寸前だった俺の一物は猛々しく天を向き、
尻餅をついている菊理姫の丁度目線の位置にあったのだから。
と言って今から服を取りに戻るのも間抜けな気がして、
俺は迷った挙句とりあえずしゃがんで菊理姫からは直接見えないようにした。
それにしても。
俺は自分の格好の事は忘れる事にして、菊理姫を見る。
紅白の着物に身を包んだ彼女は、イシュタルとはまた違う、清楚な美しさを放っていた。
ただ、それは花で言うなら蕾の硬さをも感じさせる美しさだったが。
正直言って、俺は菊理姫に何らかの思い入れを抱いて用いている訳ではなかった。
有り体に言えばイシュタルが居る今は戦力としての彼女に用は無く、
タイミングさえあればいつ合体材料にしても構わない位だった。
俺は彼女を意識して避けていた訳では無いが、彼女も敏感に察していたのか、
歩いていても俺と会話を交わす事はほとんど無かったし、
俺とイシュタルの馬鹿騒ぎにも呆れたように遠くから見ているだけだった。
そんな彼女が事もあろうに人のセックスを覗こうとした事に、
俺は少なからず興味を抱いて彼女に近寄った。

「皆還したはずだが…驚いたな、自力で出てきたのか?」
確かにここは魔界で、人間界よりは簡単に現れる事が出来るだろうが、
それでも悪魔召喚プログラムの助けなしでは莫大なマグネタイトを消費してしまう。
「ちょっと待ってな」
その事に気が付いた俺は立ちあがるとハンドヘルドコンピュータの所に走った。
下着だけを履いて菊理姫の所に戻ると、改めて召喚してやる。
あのまま話を続けていたら最悪、菊理姫がスライムになってしまう所だった。
「あ…ありがとうございます」
菊理姫はまた俺の物を直視してしまわないかと恐る恐る顔を上げると、小声で礼を言った。
「そんな事はいいんだけど…何かあったのか?」
「あ、あの、昼間、主様とイシュタル様が喧嘩なさっていたようでしたので、
心配に思いまして…」
嘘だ。俺は直感でそう悟っていた。
俺達のあれは今日に始まった事では無いし、その後もごく普通に会話をしているから、
あれを喧嘩などと思う奴はいないだろう。
菊理姫は最初から俺達の交わりを覗こうとして出てきたに違いない。
しかしそれに対して何か言おうとする前に、イシュタルが何か考え付いたのか、
俺の口を人差し指で軽く塞ぐと菊理姫に語りかけた。
「心配してくれてありがとう。私達なら大丈夫よ」
菊理姫の言葉を否定せず、その気遣いにまず感謝する。
全てを包み込む母性に、菊理姫の顔が落ちつきを取り戻す。
しかし、イシュタルのイシュタルたる所以はそれだけではもちろん無かった。
急に表情を悪戯っぽいものにして、興味津々と言った風情で尋ねる。
「それよりも、ね、どうだった? 私達」
「え? あ、あの…楽しそう、でした…」

男女が裸で転がり回っている所を見てどう、も無いものだが、
女神としての格が違うのか、気圧されたように菊理姫は答える。
「でしょ? 実際、とても楽しいのよ。それに気持ちもいいし。
…ね、良かったらあなたも一緒にやってみない?」
傍で聞いていると突拍子もない提案も、
全てを包み込むようなイシュタルの笑顔でそう言われるとつい頷いてしまいそうになる。
菊理姫もそうだったらしく、数瞬の間イシュタルの顏を黙って見つめていたが、
あと少しと言う所で我にかえったのか、慌てて首を横に振った。
「わ、私は縁結びの神なのですよ。そのような事」
「でも君は、俺とイシュタルの事を覗いていた」
「それは…」
「俺とイシュタルがこういうことをするのを、見たかったんだろう?」
単の上から胸をまさぐると、驚いたように身体を震わせて俺の手を跳ね除ける。
そのあまりに初々しい反応は、彼女が恐らくまだこの手の事を経験した事がないのだろう、
と俺に確信させる。
「あ、あの…申し訳ありません」
菊理姫は俺の手を跳ね除けた事を律儀に謝ったものの、
俺が少しにじり寄ると、警戒するように足を固く閉じて壁を作る。
膝を立ててあくまでも俺を近づけようとしない菊理姫に、
俺は困ってイシュタルの顏を見る。
随分と情けない顏だったのか、イシュタルは軽く吹き出すと菊理姫の背後に回ってゆっくりと語りかける。
「いいのよ。私も出来ればあなたと一緒にしてみたいけど、嫌だったら断っても構わないの。
大丈夫。この人すごくいやらしいけど嫌がる事はしないから」
目の前でこき下ろされた俺はイシュタルを睨みつけたが、
彼女はどこ吹く風と言った顔で受け流すと、菊理姫の手を握る。
「どうする? やっぱり嫌?」 
「…………嫌じゃ、ない…です…」
長い沈黙の後、ほとんど聞き取れない声でようやくそれだけ言った菊理姫は、
余程恥ずかしかったのか、立てた膝の中に顔を隠してしまう。
その為に彼女は気付く事はなかった。
後ろでイシュタルがごく弱い効力のマリンカリンを唱えていた事に。

通常マリンカリンは魅了というよりはほとんど意識を支配してしまう為、
戦闘の時は便利だが、こういう時は少し具合が悪い。
しかし、イシュタル程の使い手になれば効果を弱めて使う事など簡単に出来る。
今イシュタルの唱えたマリンカリンは心を操る為の物ではなく、
菊理姫の心の中にある怯えを取り払い、彼女の本心を優しく誘い出す為に用いられたのだ。
俺は菊理姫を驚かさないように気を付けながら、
そっと両手で彼女の頬を挟みこんでじっと目を見つめる。
少しずつ顏を近づけると、覚悟を決めたのか、
それとも内心の、自分でも気付かない小さな期待が形になったのか、
濡れたように黒い瞳から光る物を零れ落とし、静かに目を閉じた。
その涙に罪悪感めいたものを感じながらも、軽く唇を合わせると、
手の中で軽く顔が震え、やがて俺を受け入れる。
俺は下唇を動かして少しだけ振動を与えてやると、一旦唇を離した。
「キスも…初めて?」
「あ…はい…」
「あの…嫌…だった?」
目を閉じたまま答える菊理姫に俺は急に不安になって、思わずそんな事を口走る。
普段の俺ならこんな事は聞きはしないのだが、純情過ぎる菊理姫に俺も魅了されてしまったようだ。
菊理姫は薄闇に浮かぶ白皙の顔を耳まで赤く染めながら、
ほとんど判らない位小さく首を横に振った。
俺はその顔を優しく撫でると、たった今口付けたばかりの唇に指先で触れる。
「もう一回…するよ」
彼女にはかえって恥ずかしいのかも知れないが、一応そう前置きして、
今度は同じように唇に触れた後、舌先で軽く舐める。
驚きが掌に伝わってきたが、そのまま少し強引に舌を入れた。
怯えたように縮こまる彼女の舌を探し出して、
二、三度つついた後、舌の縁をなぞりあげる。
初めて受ける刺激に菊理姫の舌は更に逃げようとしたが
そんな場所があるはずもなく、やがて諦めたように俺の舌に動きを委ねた。

温かな彼女の口内を隅々まで味わいながら、何度かに分けて少しずつ舌を絡めていく。
「! ……ん……ぅ…………っぁ…」
彼女の舌の新しい場所に触れる度、彼女の形の良い鼻から息が漏れる。
菊理姫は自ら絡めてこそ来なかったが、俺の背中にしがみつく手が嫌がってはいない事を伝えていた。
調子に乗った俺は舌腹に唾液を乗せて彼女の中に送り込む。
粘液の質感に驚いたようだったが構わず彼女に初めての快楽を植えつけていくと、
次第に背中の腕から力が抜けていった。

散々菊理姫の唇を堪能した俺は、ゆっくりと唇を離す。
菊理姫の唇の端が、月明かりを受けてほのかに光る。
その妖しい煌きに、俺は再び彼女に唇を寄せ、どちらのものかも判らない唾液を掬い取った。
菊理姫は瞳にうっすらと悦楽を宿しながら俺を目だけで追っていたが、
額に張りついた彼女の黒髪を整えてやると急に口元を手で塞ぐ。
「どうした?」
「あ…いえ……その、主様の…が…私の……」
途中まで言って自分が何を言おうとしているか気がついた菊理姫は
また顔を俯けようとするが、そこで動きを止めてしまった。
「あ…あの…!」
菊理姫と同じく視線を下げた俺は動きを同じく止める。
そこにあるはずの、色鮮やかな紅い着物が無かったからだ。
俺達がキスをしている間に、イシュタルがいつのまにか菊理姫の単を脱がせてしまっていたのだ。
はだけた単の間から現れた意外に大きな双乳に俺は思わず手を伸ばすが、
菊理姫はその前に素早く腕で隠してしまった。
そのまま身体全体を縮こまらせて、少しでも肌の露出を減らそうとする。
良くは判らないが、女は服を脱ぐときにも色々と考える事があり、
だから脱ぐ事自体も手順の一つに入っているらしい。
イシュタルは何も着ていないような物だから違うかもしれないが、
とにかく、それをこんな風にすっ飛ばされては動揺するのも当然だろう。

俺は再びどう接していいか判らなくなってイシュタルの顏を見る。
彼女は優しく笑って頷くと、菊理姫をなだめにかかった。
「私…怖い、です…」
「大丈夫よ。ほら、こうすると落ちつくでしょう?」
イシュタルはそう言うと菊理姫の腰に腕を回し、背後から優しく抱きかかえる。
豊かな胸から大地母神の温かさが伝わったのか、
菊理姫は腹にあてがわれた手に自分の手を重ねるとゆっくりと目を閉じる。
「縁を結ぶなら…その後の事も知らないとね」
イシュタルが少しずつ身体を密着させて掌をずらしていっても、もう菊理姫は抵抗しなかった。
手に余る大きさの乳房を、表面をなぞるようにゆっくりと撫でる。
掌の中心が菊理姫の胸にある蕾の位置まで来ると、手全体で押し包むように握った。
「あ、イシュタル…様……んっ…」
イシュタルの手はほとんど力を入れずに何度も弱い刺激を菊理姫に伝え、
細い指が美しい球面を俺に見せつけるように滑っていく。
「イシュタル様…わた…し…」
「気持ちいいでしょう? ここは、生命を育む場所。でも、それだけじゃないの」
淡い桃色の部分を摘み、爪の甲で踊るように刺激する。
「ぅあ、それ……」
イシュタルの指先がもたらす快感に、菊理姫は顎を仰け反らせて甘く息を吐く。
目の前でいやらしく形を変える胸に俺も触ってみたくなって、
空いている方の膨らみにそっと指先を当ててみる。
菊理姫はわずかに身体を震わせたが、それ以上は拒否しなかった。
俺はそれを受諾のサインと採って、触れる面積を広げていく。

手で感じた菊理姫の乳房の大きさはイシュタルと同じくらいだったが、
体つきが菊理姫の方が細い為により大きく見える。
みずみずしい弾力に溢れた乳房を下から持ち上げるように揺らし、
確かな重みを支えるように、掌全体で握りこむ。
「ふっ……ぁ…」
俺は片時も腕を休めず手を動かしながら、
貪欲にイシュタルが愛撫している方の乳房にも指を伸ばした。
イシュタルと俺、二本の手がひとつの乳房を弄ぶ。
二つの指先でしこっている乳首の上下から軽く押してみたり、指腹で転がしてみる。
「お願い…お願いです、そんな…に、しないで……ください…」
俺は菊理姫の頼みに無言のまま、突然左の乳房に吸いついた。
「あっ…! ん……ぁ…」
腫れあがった乳首をねっとりと舐めまわした後、軽く歯で咥える。
その度に表情を変える豊艶な胸を、赤ん坊がするように何度も吸い立てる。
「ふふっ、私も吸っちゃおうかな」
夢中で吸いつづける俺を見て興奮したのか、イシュタルも俺と肩を並べるともう一つの乳房に吸いついた。
「やっ…やっ…!」
二つの乳首を同時に吸われて、たまらず菊理姫の身体が跳ねる。
処女なのに既に充分なまでに母性を宿している乳房が揺れ、俺とイシュタルの口から逃げ出した。
俺とイシュタルは顔を見合わせると、菊理姫の身に起こった事を察して彼女の顔を覗きこむ。
「ね、今…イっちゃった?」
「ふぁ…わ、解らないです……何だか、背中がぞくぞくして…急に、すごく…」
「気持ち良かった…だろ?」
初めての絶頂を経験した菊理姫は小さく息を吐き出しながら俺達の顔を交互に見つめた後、
ぎゅっと目を閉じて頷いた。
その可愛らしい仕種に俺達は再び好き勝手に彼女の身体をまさぐりはじめる。

「お願い…です、少し、待って…」
絶頂の波が引ききっていない菊理姫は訴えるようにイシュタルの手を探すが、
イシュタルはその手を自分の口元に運ぶと爪を舌で刺激し始めて、
それさえも快楽の手段としてしまう。
「やっ…! イシュタル、様…」
白魚のような、としか形容しようがない清らかな指を、
俺のペニスを咥える時のように頬がへこむほど強く根元まで吸い上げ、
中で舌がどのような動きをしているのか淫らな想像を掻きたてる。
「はぁっ……」
菊理姫の背中を駆け上った痺れが口から漏れる。
その甘い音色に惹きつけられた俺は、負けじと菊理姫の感じる場所を探る事にした。
わざと一番敏感な場所を避けて内腿の付け根に舌を這わせると、
そのまま足を抱きかかえるように持ち上げて、足先へと唾液の筋を残していく。
所々唇の先で噛んでやりながら踝まで辿りつくと、邪魔な足袋を脱がせた。
「主様…そこ、は…」
神でも足先はやはり恥ずかしいらしい。
考えてみれば当たり前の事に俺は何故かひどく興奮してしまって、
菊理姫の踝を掴むと指先にキスをする。
「ふぁ……主様、だめ…です…」
セックスすら初めての菊理姫にするには少し倒錯的な愛撫かとも思ったが、
月灯りに青白く染まった肌はどうしようもなく俺を誘う。
快感から逃れようとしているのか、くの字に折り曲げた指が可愛くて、
唾液を指の付け根のくぼんだ所に擦りこむ。
「ぁ…! ふ、ぁ…」
くすぐったさに震える指が俺の顏を叩く。
右腕と左足、身体の両端から押し寄せる愉悦に、菊理姫の残された手足が宙をさまよう。
俺はすぐに終わらせてしまうのが勿体無くて、
イシュタルと同じように一本ずつ丹念にしゃぶっていく事にした。

865名前:名無しさん@ピンキーメェル:sage投稿日:03/03/1101:12ID:1iu732jS
(14/18)
「ん………主様、お願…い……うむっ、ん……」
菊理姫は執拗に足を舐める俺に何かを言おうとしたようだったが、その声が途中でくぐもったものに変わる。
何事が起こったか目だけを動かしてみると、イシュタルが彼女の上半身に被さってキスを始めていた。
イシュタルのキスは俺よりも柔らかく、そして長い。
まるで別の生きもののように蠢く舌は、俺でさえ蕩かされそうになってしまう事が何度かある。
二人目のキスでイシュタルの洗礼を受ける事になった菊理姫に少しだけ同情しながら、
たっぷりと彼女の足を堪能した俺は彼女の身体の中心を目指す。
辿りついたそこは、これだけ濃厚な愛撫を受けていてもまだほとんど開いてはいなかった。
蜜だけをおびただしく溢れさせながら、穢れを拒むように頑なに門を閉ざしている。
叢は手入れなどした事がないのだろう、豊かに茂り、彼女の秘唇を覆い隠していた。
厳重に隠された菊理姫の女芯の包皮を剥き、
初めて外気に触れる桃色に輝く宝石を軽くつまんでみる。
「や…やあぁっ!」
これまでに無いほど菊理姫の反応は激しく、多くの女性と同様、
そこが最も弱い場所である事を俺に知らせる。
「そんなに…気持ち良かった?」
「は…はい…」
快感に頭が痺れてしまったのか、俺の恥ずかしい質問にも素直に頷く。
あまり続けて刺激しては辛いだろうと思いながらも、
俺はつい黒々とした繊毛の中で控えめに存在を主張する肉芽に舌を寄せる。
「いや、いや、主様……ぁ、ぁふ…」
俺の頭に菊理姫の指が食い込む。
それは彼女の感じている快感な気がして、俺は思いきって薄桃色の宝石を咥えてみた。
「ぅ………ゃ、ゃぁああっ…!」
淫声が弾け、菊理姫の身体がしなる。
腰を軽く浮かせて熱い蜜を秘裂からあふれさせながら、
菊理姫の全身は二度目の絶頂でゆっくりと弛緩していった。

「ねぇ…そろそろしてあげないと可哀想よ」
既に二回も達せられてしまっている菊理姫はもう理性も残り少ないのか、
ぼんやりと口を開けながら、焦点を失いはじめた目で俺を見つめている。
「あ…あぁ」
菊理姫の初々しい反応につい夢中になってしまっていたが、確かに、
恐らく自分で慰めた事もないだろう彼女に少し無理をさせすぎたかもしれなかった。
ぐったりとしている菊理姫の足を押し割って貫通の儀式を行おうとした俺は、
ふとある事に心付いてイシュタルに尋ねる。
「な、なぁイシュタル。神様の処女って人が奪っちまっても良いのか?」
良くは解らなかったが、人間と交わって処女を失うと言う事は、
神性をも失ってしまう事になりはしないか。
俺はそう疑問を抱いたのだが、イシュタルの答えはあっさりとしたものだった。
「さぁ? 大丈夫じゃないかしら。判らないけど」
「お、おい…」
無責任な言い草に俺は腹を立てたが、菊理姫はもう我慢出来なくなってしまっているようだった。
潤んだ瞳で俺を見ると、一流の娼婦でさえ出来ないだろう表情で懇願する。
「お願いです…私…私にも、契りを…教えて、ください…」
「ほら、この子もこう言ってるんだし」
イシュタルに煽られて、俺も覚悟を決めた。
何かあったらあった時だ。
ようやく男根を迎え入れる程度には開いた花弁に、切っ先を押し当てる。
「…いくよ。息を吐いて」
侵入してくる異物を押し返そうとする強い力に抗いながら、
ゆっくりと、しかし途中で止める事はせずに一気に奥まで押し入れた。

「うぁっ…! ああぁっっ!」
とても菊理姫の口から出た声とは思えない叫びが、喪失の痛みを俺に訴えかける。
俺はせめて最初の痛みが落ちつくまで待とうとしたが、
イシュタルが信じられない事を口にした。
「菊理姫の身体を起こしてあげて」
今貫いたばかりでいきなり身体を起こすなど菊理姫の痛みが増すだけだ。
俺はそう思ったが、慈愛の女神が何の考えも無しにそんな事を口にするはずが無いと考え直し、
言われた通りに菊理姫の背中を抱えて起こす。
「あっ…! っ…………ぅ、ぁ…」
菊理姫の口からこぼれた悲鳴は小さな物だったが、
それはあまりの痛みに叫ぶ事さえ出来ないからのようだった。
俺の背中に菊理姫の爪が食い込む。
すると、菊理姫の背中にあてがわれたイシュタルの手が青白く光った。
恐らく破瓜の痛みを紛らわせたのだろう、菊理姫の顏に浮かんでいた苦痛の表情が和らぐ。
それでも体内に打ちこまれている異物が生じさせる新しい痛みまで消せる訳ではなく、
すぐに形の良い眉が軽く歪む。
その表情に保護欲めいたものを覚えた俺は菊理姫を更に抱き寄せた。
苦痛に歪む頬に跡を残す一本の筋を見つけて、そっと指先で拭ってやる。
「主…様…」
痛みを堪えながらも懸命に微笑もうとする菊理姫に、
俺は一秒でも早く彼女の痛みを取り去ってやりたくてイシュタルを仰ぎ見た。
「ゆっくり揺すってあげて。ゆっくりよ」
落ちついたイシュタルの声に、
俺は言われた通り菊理姫の背中に腕を回して大きく動かないようにしてから
彼女の身体をそっと揺する。
何度かその動きを続けた所で、再び菊理姫の背中が青白く染まった。

「あ……ふ…」
それでもう痛みはほとんど失せたのか、光が消えた直後に漏れた彼女の声は吐息だけだった。
「大丈夫? もう痛くない?」
「は、はい…大丈夫、です…」
イシュタルの問いかけにもなんとか答える事が出来るくらいにはなったようだ。
俺はその言葉を確かめるように、菊理姫の腰を軽く持ち上げて離す。
「つっ…ぁ…」
「あ…痛かったか?」
途端に顔を仰け反らせる菊理姫に、俺は少し早まったかと焦ったが、どうやら違ったようだ。
「いえ…その、お腹が、熱くて…気持ち…良くて…」
「もう、あとは…気持ち良くなっていくだけよ」
イシュタルは菊理姫を挟みこむように俺の膝の上に跨る。
絞るように菊理姫の双乳を掴むと、俺の胸に乳首だけを触れさせて軽く回す。
「ふぁぁああっ……!」
身体に触れた菊理姫の胸の先端から、全身を麻痺させるような快感が俺に流れ込んでくる。
俺は矜持を振り絞って声を出すのを堪えると、がむしゃらに菊理姫にしがみついた。
菊理姫も俺に抱き着いて、豊かな胸が俺達の間で押しつぶされる。
「あらあら、あなたももう限界なの? しょうがないわね、これからだったのに」
俺と菊理姫の限界を敏感に悟ったイシュタルは残念そうに呟いて俺の上から離れた。
イシュタルに感謝しつつ、再び菊理姫の身体を押し倒す。
腰を動かし始めると、菊理姫の狭い肉路が蠢き、俺のペニスをあらゆる所から締め上げる。
「あっ、あ、んぁ、ぁ、んっ…あぁ…」
一回打ち込むごとに菊理姫の喘ぎはその間隔が短くなり、
熱くたぎっていく蜜壷は噴火寸前になっていった。
イシュタルは切なそうに草を掴む菊理姫の手を優しく取ると、両手で握り締めてやる。
俺ももう片方の手を同じように握ってやると、最後のスパートをかけた。

「主様…私、何か……来ます………やっ、やあぁっ!」
大きなうねりが俺を包みこむ。
その凄まじい愉悦の波にそのまま菊理姫の中で出してしまうところだった俺は、
菊理姫の絶頂の声に我に返ると慌てて彼女の中からペニスを引き抜く。
猛り狂った怒張が外気に触れた瞬間、俺にも限界が来た。
菊理姫の深奥に辿りつけなかった樹液が悔しそうにほとばしる。
ぐったりとした菊理姫の生白い身体を見下ろした俺は何故だか今までに無いほど疲れてしまい、
猛烈な眠気に抗う事も出来ずに彼女の傍らに倒れこむとそのまま一気に眠りに落ちてしまった。
「もう…私の事すっかり忘れて。…ふふっ、ま、しょうがないわね。ま、今日は許してあげるわ」
最後にイシュタルが鼻の頭を弾いたような気がしたが、夢か現かもう俺には判らなかった。

「いつまで寝てるのよ。そろそろ起きなさい」
イシュタルに揺り起こされて俺が目を覚ますと、もう二人とも服を着終えていた。
一人だけ裸なのが急に恥ずかしくなって俺も慌てて服を着る。
適当に装備を整えると、菊理姫と目が合った。
生まれて初めて女性と夜を明かした時のように俺の体を羞恥が襲い、なんとなくうつむいてしまう。
しかし菊理姫の方は足取りも軽やかに俺に近づくと、下から覗き上げて軽くキスをした。
「私、こんなに素敵な事があったなんて知りませんでした。
……今夜もお願いしますね」
昨日までよりやや明るい口調で菊理姫はそう言うと、恥ずかしそうに俺の傍を離れる。
「すっかり気に入られちゃったわね」
妙にさわやかなイシュタルの言葉に、俺は菊理姫が懐いてくれた事よりも、
これからは二人を相手しなければならない事に気が付いて愕然としていた。
「私は遠慮してあげようか?」
「…いいのか?」
俺の気持ちを見透かしたようなイシュタルの囁きについそう言ってしまった直後、
鼻に鋭い痛みが走る。
「だめに決まってるでしょ。二人分、ちゃんと頑張りなさいよ」
俺は鼻を押さえながら、魔界でマッスルドリンコを売っている所を必死に思い出していた。

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