歪んだ街


部屋の中で荒い息遣いが流れる
お互い向きながらただ快楽のためにひたすら腰を動かした。
「…バラキ、もっ…と…もっと…突いて!……そこ…そ……こを…もっと…」
あのとき見たお袋と同じ淫乱な言葉を出してケイはあえでいた。
これ以上彼女の汚れた言葉を聴きたくなかった。
無理矢理ケイの唇を奪った。
ケイは嫌がりもせずに彼女から舌を絡ませきた。
お互いの舌を貪り食うように絡めた。
昔の同級生が言っていたレモンの味とは程遠い獣の味がする。
あいつも自分の姉のこんな乱れた姿を見ていたらショックを受けるだろうな。
どれくらいの時間がたっている。
そんな考えも快感の波に打ち消されようとしていた。


スミレから電話が掛かってきた。
「ケイが起きたよ。」
携帯電話から第一声はそれだった。
「それは本当か?」
「本当よ。ムビオラとミランダも目覚めた。
魔界に行ったとか、ナビが悪魔だとかわけのわかんないこと言っているけど、ちゃんと目覚めたよ。
これから真東京に行くと言うけど、あんたはどうする。」
「俺は住宅街で待つよ。きっとケイは家族と会うと思うんだ。」
「チューオーに見つからないようにして。」
「それぐらいは分かっている。」
電話が切れた。
まるで死んでいるように眠っていたケイを思い浮かべた。
眠ったときと同じ変わらない姿で、俺はこのままケイが永遠に目覚めないじゃないかと内心不安だった。
穢れのない眠り姫。
あの洪水の後、スミレに隠れて目覚めないケイにキスをしたことがあった。
感じたのは冷たい口唇の感触だけ。
王子様の口づけのように目覚めることはなかった。
あれからもう10年。
今年で俺もケイと同じ22歳。
スミレから教えてもらったハッキングの腕も鍛えあげた。
俺はケイを守れるほど力もつけたはずだ。
俺はケイの王子様になる。
昔お袋から聞かせてもらった眠り姫の話を思い出しながら歩道を歩いた。

向こうの通りにケイがいた。
あの潜水艦に向かうときと同じ姿で。
誰か探しているように辺りを見回していた。
彼女の地下世界の薄汚れた服はこの海上都市でかなりの違和感を醸し出した。
しかし、俺には清潔な服を着ているこの真東京に住む腐った人間より遥かに綺麗だった。
「ケイ!
会いたかった!
スミレから連絡があったんだ!
意識が戻って本当によかった!」
ケイは突然自分の名前を呼ばれて驚いている様子だった。
俺のことが誰か分かっていないのか?
それが無性に悲しかった。
「わかるか?
オレ、バラキだよ!」
ケイの驚いた表情がすこし浮かんだ。
きっと、俺が大きくなったことに驚いただろうな。
「バラキ…君。…大きくなったね。そうだね、私10年間眠っていたからね。
どうしてここにいるの?」
「ケイが海上に出たら、
きっと家族を捜すだろうと思って、
このあたりを隠れて待っていたんだゼ。」
「ありがとう、バラキ君。」
まだ俺が子ども扱いされていることに少し腹が立った。
「でも、もう戻ったほうがいい。
中央は俺たちをマークしているから。」
「そうね。」
振り返ったときの流れるような髪の香りが心地よかった。

ミランダとスミレの口論の後、ミランダはそのままターミナルで海上都市へ向かった。
「勝手にチューオーに殺されろっての。」
スミレの悪態がむなしく潜水艦の中を響いている。
気まずい静寂の中、ケイはダイブしようとしている。
俺は慌てて声をかけた。
「よぉ、ケイ。
俺も確かめたいことがあるんだ。」
「バラキ君。どうしたの?」
「実は、お袋が池袋にある奇妙な建物に入っていくのを見たんだ。
でも、扉にロックがかけられていては入れなかった。
俺、その中が何なのか確かめたい。
ケイ、一緒に池袋に来てくれ。」
「いいよ。ちょうどなに調べようか困っていたから。」
笑顔が眩しかった。
もしかしてその笑顔は、ただ俺のお袋の浮気を知った同情心から来ているかもしれない。
ケイも街のやつらと同じかもしれない。
でも、俺はケイを信じたい。
ケイが街のやつらと違って汚れていないことを。

池袋の喧噪とした雰囲気が腹立たしかった。
特にこの歓楽街には俺の嫌いな汚い大人ばかりいるように見える。
「この扉だ。ケイ。
ハッキングは扉の隣にある端末から出来そうだぜ。」
「オルトロス、行くわよ。」
「ケイ、何かあったら俺が守るからな。」
「私は大丈夫よ。バラキ君こそ気をつけて。」
「ああ」
こんなときまで子供扱いか。
でも俺のハッキングの腕を見れば少しは見直してくれるはず。
さっさと中枢に向かおうと枠組みしかない空間を進もうとした矢先、体が動かなくなった。
「ぅわっ!何だこれ、どうなってるんだ!」
「バラキ、大丈夫か?」
この声は確かムビオラの声か?
「ムビオラ!?
どうしてここが?」
「君達の行動が気になったからな…」
ケイの行動がだろ。
「それより、どうしてハッキングなんか?」
「今は言えねぇよ…」
お前に言えるか。お袋の浮気現場に乗り込もうなんてよ。

「そうか…
それなら深くは詮索しない。
でも、少しの間だけ待ってもらえないか?」
ムビオラはそう言うと、辺りの風景が変わった。
「なんだよ。これ!
トラップエリアだらけじゃねえか!!」
「こちら側で、フロア内にあるトラップエリアを強制的に認識させた。
どういう事情があるのか知らないが、
ケイを危険な目にあわせるんじゃないぞ。」
やっぱりケイのことしか心配していないのかよ。
「そんなこと分かってる!
注意して進めばいいんだろ!」
と悪態をついた。
「ムビオラ、ありがとう。」
と通信から聞こえた。
結局俺はケイから頼りにされていないと思い知らされた。

ようやくプロテクトを解除し、店の中に入った。
そこには知りたくないものがあった。
異臭の中、汚い行為に身を任せている多くの人の中に
お袋が男のものをしゃぶっていた。
「あら、見慣れない顔の子ね…
あなた 名前は?」
「おふくろ……
信じたくなかったが、やっぱりこんなことを…」
俺はこれしか言えなかった。
本当は俺の勘違いであって欲しかった。
だけど目の前の光景は残酷だった。
「さぁ、早くこっちへおいで。」
お袋は脚を広げて息子である俺を誘っている。
「いくら俺がでかくなったからって
息子の顔も忘れちまうのかよ!」
悲痛の叫びだった。
そのとき奥から一人の男がこちらにやって来た。
「お、親父?」
「オヤジ?」
親父はお袋の近くのソファーに座りながら俺の顔を見た。
「そういえば、君、死んだバラキにどことなく似てるな…」
「し、死んだって…
俺生きてる!
俺、バラキだぜっ!」
分かって欲しかった。
きっと言えば俺だと分かる筈だと。
しかし、その幻想は敢え無く消えた。

「分かったぞ。
君、噂のライフゴーストだな?」
「ライフゴースト?」
ライフゴーストって街で聞いたあれのことか?
腹が煮え繰り返るように怒りが湧いた。
「この俺が仮想人間だって言うのかよ?」
「誰でも構わないわ。」
お袋が言った。
「ここはイデアスペースなのよ。
もっとこの場を楽しみましょう。」
「そうだな」
親父は立ち、ケイの前まで歩いた。
「それじゃあ、わたしはこちらの女性と…」
「オヤジまでこんなことを!!」
心底世の中の何もかも信じられなくなった。
「かわいいじゃないか。
この子は君の彼女かね?」
「やめろ!オヤジ!!」
その好色な顔がケイに近づくだけで嫌だった。
「さぁ、おいで、坊や」
乱れた服も直さず、品を作った歩き方でお袋が近寄ってくる。
「俺に触るなっ!!」
考えるより先にお袋を殴った。
「な、何をするの!」
頬が赤くなった
「汚ぇ……
お前も親父も薄汚いドブネズミだ!」
この場から早く抜け出したい。
こんな現実はもう見たくない。
「バラキ君…」
ケイの声も無視し、部屋から出た。

闇雲に走った先は支配人室と書かれたドアの前だった。
親父とお袋に対しての怒りが収まらなかった。
どうせならあいつらの好きなこのお店を潰してやろうかとドアを開けた。
「どうやら会員の方ではございませんね。
一見さんの方もこの秘密クラブでは歓迎する。」
派手なピンクのシャツを着た長髪の男がそこにいた。
その顔はさっき親父が浮かべていた笑みそっくりであった。
「あまり楽しんでいませんようですが、お気に入りの子はいなかったのですか?
それともお子様には刺激が強すぎましたか?」
さらにいやらしい笑顔でこちらを向いた。
「こんな汚え店、潰しに来たぜ。
まずはお前を半殺しにする。」
NAVIのヤクシニーとともに支配人に近づいた。
そのとき、強烈な眠気が襲い掛かってきた。
「お前、何を…し…た。
ヤクシニー、…あいつを…殺せ!」
しかし、ヤクシニーは完全に寝入っていた。
こんな魔法を使うなんて、こいつ、ただの人間じゃない。

「管理局の人間でもないし、商売敵の鉄砲玉でもなさそうだ。
ふーーん、どうもお前は真東京の住民でもなさそうだな。」
俺の顔をじろじろ見ている。
「殺すなら、早く殺せ!」
「貴重なエネルギー源を簡単には殺さないさ。」
エネルギーって何のことだ。
「どうせならお前と一緒に来たおじょうさんも処理するさ。」
顔が笑みで完全に歪みきった。
「ケイのことを言っているのか?ケイに手を出したらお前絶対殺してやる!」
「威勢はいいが、そんな格好じゃどうしょうもないな。
お前、ケイとやらのこと好きなんだな。」
「……………………………………」
「その様子じゃ、片思いか?」
「……………………………………」
「言わなくてもお前の気持ちなんぞ分かる。
早くお前を捜しにここに来て貰いたいなあ。」
下卑た笑いが聞こえる。
そのとき扉が開いた。
ケイだ。
「よく来た、欲望の世界へ…」
にやけた表情でケイに話しかけている。
「バラキ君大丈夫?」
「ケイ!」
こいつは普通の人間じゃないと注意しようと叫ぼうとしたものの、
そのとき支配人は光に包まれた。
光が消えると、
そこには赤い皮膚、大きな翼、人間のとき以上に下品な笑み、そして強大なペニスケースを持った悪魔インキュバスに変身していた。

「オマエ、悪魔だったのか!」
「このイデアスペースには欲望が密集している。
特にこの池袋はオレ好みのエネルギーが集まる。」
「エネルギーだと?」
さっきも似たようなことを言っていたが、どういうことだ。
「ほれ、オマエらもこの店の会員のようにその場の流れに身を任せろって」
オレがあの親父やお袋みたいにしろって言うのか?
違う。
「オレやケイはあんなケガレタヤツらとは違うんだ!」
「素直になれよ。
オマエがこの女をどう思っているのか………
その心の中はお見通しなんだよ。」
「そ、そんなの嘘だ。
オレはケイの事は好きだが、そんなんじゃねぇ。」
否定すれば否定するほど、ケイに対して汚ぇ行為をしている俺を思い浮かべる。
「殺せ、ケイ!
この悪魔を殺すんだ!」
こいつがこれ以上余計な事は言わせたくなかった。
ケイは次々と仲魔を召喚している。
「さぁ、来い!
可愛がってヤル、おじょうさん。」

オルトロスの咆哮で戦闘が始まった。
インキュバスもケイ達も動かず、魔法の詠唱に入っている。
「「マハジオンガ!!」」
「メギド!!」
魔法の発動は同時だった。
先にケイとエルフとナーガとサイクロプスの電撃多重魔法がインキュバスを焼いた。
しかし、インキュバスはあまり傷を負っていないようだ。
少し遅れて強烈な光が当たり一面に広がった。
次に目を開けたとき、ケイは立っているのもやっとの状態であった。
仲魔たちも瀕死状態であり、オルトロスだけが主人を守ろうと傷ついた体で立ち向かおうとしている。
「ケイ!!逃げろ!!!」
俺は叫んだ。
ケイはそんな俺を見てかすかに微笑み、そして剣を持ち、まだ戦いに望もうとしている。
俺にもっと力があれば彼女を守れるのに。
こんなちんけな睡眠魔法を破るのに。
オルトロスがインキュバスを噛み付こうと突進するものの、重傷では本来の早さが出せないためか簡単に避けられる。
インキュバスはそのままケイに飛んで近づく。
ケイは剣を振り落とすが、インキュバスはたいした傷を負っていない。
インキュバスは下卑た笑いで、あたかも恋人と戯れるような手つきで首筋を触った。
そして、首筋に沿って指を動かし、あごまで這わせたら、ゆっくりと離れた。
「きゃああああああああああああああああああああああ!!」
悲鳴が響き渡る。
そのままケイはひざから倒れた。

「ケイに何をしたぁ!」
イデアスペースから消えていないという事はドール化していない筈だが、明らかにケイの様子がおかしい。
顔が熱があるかのように紅くなり、息も遠目から見ても荒くなっていた。
「殺してはいないさ。
オレはグルメだから断末魔のマグネタイトは好きじゃないんだ。
ククク………」
下品な笑いを浮かべて、しゃべっている。
「少し理性を剥いだだけさ。
そうしないと享楽の間の効果がないからな。
この女が乱れたらどんなマグネタイトが得られるか楽しみだぜ。」
ケイの息遣いはさらに荒くなった。
「だいぶ出来上がってきたようだな。
どうだ、オマエも素直になったらどうだ?」
「俺やケイはあんなケガレタヤツらとは違……」
「はあ…アン。気持ち…いい…」
ケイは右手で服の上から左乳を揉み始め、左手でベルトを外しスカートを脱いだ。
「ククク…俺やケイはあんなケガレタヤツラとは違うねえ。」
ケイはさらにパンツの中に左手を入れ、何かをいじっているようだった。
弄るたびにはしたない声を上げている。
「どうやら彼女はその場の流れで身を任せているようだな…ククク。」
「…うっ……あ…だめ………いけ…な……い。……だ…れか……入れて。」
さらに左手が激しく動かしている。右手も服の下にいれて胸をもんでいる。

「入れてやったらどうだ?
オマエはそうしたいのだろう?
彼女もそうしたいみたいだぜ。」
体が突然自由に動けるようになった。
「俺はそんなこと思っていない。
俺は…俺は……こんなやり方で…ケイを抱きたくない!!」
「素直じゃないな。
ならもっとサービスで。」
そういうとケイの負っていた傷も治り、服も下着も一瞬のうちに消えた。
ケイはそんなことも気づかず、自分を慰めることしか考えていないようだ。
俺も裸にされている。
「元気がいいじゃないか?
まあ、オレほどじゃないが立派なものだぜ。
そいつを入れてやればそのおじょうさんも泣いて喜ぶぜ。」
俺は黙っていた。
ケイをずっと見つめていた。
「…童貞か、仕方ないな。
二人分のマグネタイトが手に入ると思ったがな。
疲れるがオレが相手してやるか?
あまり放って置くと狂っちゃうからな。」

インキュバスはケイの身体を舐め始めた。
その舌は異様に長く、ケイはその舌に触れただけで身体を激しく痙攣した。
「ほう、この男性のことが好きなのか、フムフム………」
まるで何かを探っているかのようにインキュバスが言っている。
ケイはインキュバスの愛撫になすがままにされていた。
インキュバスの身体が少しずつ変化している。
身体が人間に近くなっている。
そして、ついに完全に人間と化した。
青い髪、白い肌、そして青い瞳。
その姿はムビオラそっくりだった。
ケイは自分からキスをし、まるで愛すべき人かのような目で変化したインキュバスを見ていた。
オレはそれが無性にイライラさせた。
インキュバスがケイを触っていることよりも、ケイがムビオラのことが好きだったことのほうが腹立たしかった。
「ムビオ…ラ……早く…早く挿入して!!」
お袋みたいに自分から望んでいる。
ムビオラはゆっくり入れ始めている。
「…あっ…入ってくる……はあ…お…おおき…い……」
「ケイ、初めてじゃないんだね。」
腰を器用に動かしているムビオラの顔が大きく歪んだ。
「純情そうな顔して、結構やっていそうだな。
何人その笑顔で騙した?
何人男と寝た?」
ケイは黙ったまま、ただ快楽に溺れている様だった。
「……………あぅ……なんで…動かさないの?
もっともっと…感じさせて!!」
突然インキュバスの動きが止まった。
「ちゃんと答えないと動かさないよ。
何人この穴に咥えた?」
「…………」
「オマエはスケベだな。自分から腰から動くとはな。
でも、これでは足りないだろう?」
ケイは少しの無言の後、首を縦に振った。

「なら、答えろ。」
「…………3……に………ん………」
「それはリアルでかそれともイデアスペース内でか?」
「…両………方…」
ショックだった。
ケイがまさかそんなに。
「よく言った。」
インキュバスは少し腰を動かした。
「……あ…えっ……なんで…抜く……の?」
突然、インキュバスは止めた。
ケイは我慢できずらしく、自慰を続けている。
それでも達すること出来ず、苦痛を浮かべている。
「他にも人には言えないことがあるはずだが。」
沈黙が流れる。
聞こえてくるのはケイのオナニーの音だけだった。
「言わなくてもいいが、そのままでは苦しむだけだぞ。」
「……………お……オル…トロスと…寝たことがあり…ます…」
目の前真っ暗になった。
信じていたお姉さんが、そんなことを。
「どうして悪魔と交わろうとしたのか?」
「…それは…………」
「…無理なら言わなくていい。
理由はどうあれ、オマエは何でも交わる淫乱であること間違いない。
悪魔と交わって気持ちよかったか?」
「…は……い…」

「淫乱なおじょうさんに約束どおり満たして上げましょう。
では、獣のように四つんばいになりなさい。」
「…早く……激しく突いて………うあ…」
インキュバスは元の姿に戻り、お姉さんを犯している。
お姉さんも街の連中と同じ心が腐っている。
これは夢であって欲しい。
何も考えないで彼らを見つめていた。
そんな俺の様子を気づいて、インキュバスはお姉さんを持ち上げて目の前まで近づいた。
「どうだ、よく見えるか?」
お姉さんと淫魔の結合部がグチャグチャ言っている。
「おじょうさん、彼のものはもうはちきれない様になっているが、慰めてやったらどうだ?」
「…バラキく…あん……の…おいしそう…」
お姉さんがオレのものを舐めている。
あまりの気持ちのよさですぐに射精してしまう。
「どうだ、そろそろ素直になった方がいいぞ。
このおじょうさんと抱けるのは今だけかもしれないぞ。
あの男には取られたくないだろう。」
少しの間を空け、俺は肯いた。
インキュバスから解放されたお姉さんは息も絶え絶えだったが、まだ満足していないようだった。
おれは何も考えずにお姉さんに入れた。
「ああぁぁ…………バラ……きくん…気持ちいいよ。」
「はぁはあ…俺のことを…子供扱いしないでくれ!!」
「あっあ…大人に……なっ…たね。…わかっ…たわ…バラキ…」
「…ケイ……ケイ…ケイ…ケイケイ…」
名も考えずケイの名前を繰り返して動いていた。
ケイも俺の動きに反応するように嬌声を上げている。
その後の事は覚えていない。
何度もケイとともに果てたような気がする。
ただ頭に残っているのは快楽だけだった。

誰かが頬を叩いている。
目を開けるとムビオラの顔が入った。
「どうやらドール化はしていないようだな。」
俺は一瞬どこにいるのか分からなかった。
少し考えると記憶が一気に甦った。
「確かインキュバスにやられて…………ケイは…ケイはどこだ!!」
「インキュバスなら倒した。
彼女なら向こうの部屋にいる。
ドール化はまねがれているものの、記憶障害が酷い。
支配人室に入った後のことを覚えていないらしい。」
部屋が静寂に包まれた。
ムビオラはあの支配人室で起きたことを知っているか?
ムビオラが次に何を言うか待った。
「………今後ケイを危険な目に合わせるな。」
それだけだった。
こいつがケイに気があることぐらい俺だって分かる。
殴られる覚悟ぐらいしていたのにそれだけかよ。
「言いたい事はそれだけかよ!」
「それだけだ。」
「何があったのか知っているのだろう。
それに対して何も言わなくていいのかよ。」
「黙れ。
彼女も覚えていない。
何もなかったんだ。分かるな、バラキ。」
「それが大人のやり方かよ。
それでいいのかよ。」
「他にどういう手がある!
お前も大人になれ。」

ドアが開いた。
「ムビオラ、私はもう大丈夫だよ。
そろそろ出ない?」
ケイを見ると、何もなかったかのような笑みを浮かべている。
「………バラキ君。大丈夫?」
ムビオラは俺に余計なことを言うなと言う目で俺を見ている。
「…お…れは……………へ…平気だ。
助けに来てくれて……ありがとう。」
「よかった!
支配人室に行ったらバラキ君、倒れていたから心配したよ。
って、私もインキュバスに負けちゃったんだったっけ。」
ケイは少しよろけた。
すぐにムビオラが彼女を支えた。
「ムビオラ、ありがとう。
私が勝てなかった悪魔を簡単に倒しちゃうなんて
さすが敏腕デバッカーだね。」
「ケイ、あまり無理しないでくれ。」
「大丈夫、大丈夫。
私は頑丈だけなのが取柄だから。
さあ、戻ろう。
スミレも待っていることだし。」
オルトロスを連れて部屋の外に出て行くケイを見ると胸が痛む。
これが大人になる苦しみか。
この苦しみはどうすれば取り除くことが出来るのか?
言いようのない憤怒の渦に自分が巻き込まれている気がした。

Return
動画 アダルト動画 ライブチャット